十二角と虎足
李朝の道具〜ソバン44
李朝の時代から生活必需品として重宝された小さな脚付き膳です。
厨房で作った料理をすぐに載せ、運び、そのままテーブルとして、また本を読むなど暮らしに寄りそう道具です。昔はお嫁入道具のひとつでもありました。
使われてこそ美しい…浅川巧や白洲夫妻も愛したソバン。
数年前より韓国のインテリア業界でもその『用の美』が再認識され、現代の暮らしにとりいれられるようになり、日本でもその素朴で優美な趣に魅了され高い関心を持たれる方が増えています。
京畿道で使われた十二角の天板と虎足のソバンです。サイズは一人用の食事を十分のせられる大きさ。松材で作られたと伺っています。松は朝鮮半島において広く生育する木材です。柔らかく加工しやすく、建築や家具などに多用されていました。
塗り重ねられ塗布された漆が剥げ、特に中央部分に使い込まれた跡がうかがえます。かすかに緩やかな柾目の表情が見えます。割れや亀裂はなくカシュ―材の補修も見受けられませんが細かい傷があります。
十二角の天板の立ち上がりの塗装剥げは人が使い続けた跡…目利きたちは「馴染み」と呼び尊び、この「手ずれ」の跡が際立つものを好んで選んだと聞きます。松材に漆が施されているソバンはふっくらとした温かさを感じます。
外側にツンと反った虎脚は一般的に良く見られるデザインです。スマートなふくらみと控えめなつま先を持っています。スキー板のような足のデザインはオンドルの熱を逃がさぬよう床に油紙を貼っていた為、その紙を破かないための配慮からきたものです。スキー板の両端がすり減り、少しだけがたつきがあります。
天板の真下にある雲脚と呼ばれる幕板の部分に亀裂が少し入っている箇所があります。
片手で持つことはたいへんそうです。両の手でお持ちください。
重厚な松の大木を切り、板にし、削りカタチを作りそして漆を塗る。
重量感があり長きにわたり使い込まれた証の傷までもが愛おしく感じられます。
ソファの横で読みかけの雑誌やカップを置いたり、お客様が来られた時はワインをのせておもてなし、和室のしつらえのひとつとして一輪挿しを飾ったり…窓辺に月を愛でながら晩酌も。現代の暮らしにも溶けこみます。「用の美」…使われてこそ美しい。現代まで息づく李朝の道具はいくつもの時代を見つめてきたからこそ、輝き続け、これからも私たちを魅了してやまないことでしょう。
□ 素材:松
□ サイズ:およそΦ40cm*H27cm
□ 年代不詳
無垢家具は生きています。
強い光に長時間さらされると、変色や塗装の原因になりますので、なるべく常時直射日光があたりにくい場所に設置してください。また極端な乾燥や湿気の多すぎる場所でのご使用も無垢木に変化を与えてしまいます。
日頃のお手入れは乾拭きか硬く絞った布で拭かれてください。