キム・ヒョウン
韓国絵本〜 私は地下鉄です
わたしは今日も走ります
毎日同じ時間、同じ道を
どこかから来て、どこかへ行く人々を乗せて
こんな郷愁あふれる地下鉄のひとり語りで始まる絵本をご紹介します。
舞台はソウル地下鉄2号線。
ソウルを走るおなじみの緑色のラインの路線です。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
地下鉄は地上と地下を行ったり来たりしながらたくさんの乗客を乗せ走ります。
大急ぎで階段を駆け下りる会社員、
幼子を抱えた女性、海女出身のハルモ二、
学習塾に通う疲れ模様の中学生や靴職人、
物売りのおじさん、
フリーターの青年…
物語のバトンはこの地下鉄に乗った乗客たちに渡されます。
言葉は交わしませんが、地下鉄は静かに乗客を見つめ彼らの話に耳を傾けます。
地下から地上へと変わる風景や夕暮れ時の漢江を渡る時の光
疲れて眠る人、携帯に夢中の人、外をぼんやり見つめる人
同じ地下鉄に乗り合わせた人々それぞれに背景がありそれぞれの物語があります。
目には見えない大切な物語をのせて今日も地下鉄は走ります。
登場人物に自身を重ねたり、近しい人を思い出しなんだか胸が熱くなります。
市井の人々の暮らしを大切に愛おしく描いた素晴らしい絵本でした。
また本書には特別な付録が潜んでいました!
パノラマのような形のシートで顔の部分がくりぬかれ、「私は○○です」という言葉で登場人物の中の4人が自身のことをより詳しく語っているのです。
絵本の中でできなかった話のおかげでさらに共感をもたらしてくれます。
そして最後に作家キム・ヒョウンさんが登場。「私はキム・ヒョウンです」…作家自身の生い立ちや環境が記されています。
最後に表紙にも工夫が!
安全扉のベージュの枠の部分が、単に色を塗っているのではなく細かいドット模様が浮きそこだけザラッとした手触りです。
キム・ヒョウン作家のこと…
大学で繊維デザインを専攻し勉強した後、絵本を勉強。本書は初の創作絵本になります。
3年という年月をかけ制作され2016年に出版、2021年ニューヨークタイムス【今年の絵本】に選ばれました。
□素材:紙
□サイズ:25 * 27
□ページ数:60ページ
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